【山野コーチインタビュー!】心の中のもやもやを探り、言語化して見出す「ありたい姿」と「踏み出す方法」
日々の生活の中で足踏みをしてしまうとき、なんだか気が重い日、チームや人間関係にぐっと身を固めてしまうとき。心の中に生まれているぼんやりとした息苦しさに、共に向き合うこともまたコーチングの意義のひとつです。
今回ご紹介する山野好美コーチは、個人も組織もどちらもが抱える「一歩踏み出せない状況」を解決する鍵を、クライアント自身の心の中から掬い上げてくれる伴走のプロ。コーチングでの課題解決の考え方と、これからのビジョンについてお話しをうかがいました。
1:コーチになったきっかけ
まず、コーチを目指したきっかけについて教えてください。
「コーチング」の存在自体を知ったのが2020年頃。その当時、転職して勤め始めた会社が、部下育成のために毎月コーチングをしているところで、そこで研修を受けさせていただいたときに知りました。
コロナ禍で在宅ワークがメインだった中、メンバーがもやもやしている部分を顕在化して、働くモチベーションを上げるというのがそもそもの意図でしたが、もっと深堀りして調べていくと、「ありたい姿を顕在化していくための、ロードマップを整理するための手法」であるとわかりました。そういったことって自分の中で考えたりすることはあると思うんですが、コーチングなら壁打ち相手の人がいることで自分だけでは気づきにくい点にも気づけるし、人に言われて動くのではなく自分から出てきていることだからドライブしやすい。ひとりひとりが動きやすい状態になるためのものだなと感じました。
もともとプライベートでも半年ごとに5年後・10年後の目標を書き出してフィードバックする、ということをしていたんですね。これをもっと適応範囲の広い形にブラッシュアップしたのがコーチングなんだなって、これまで自分がやってきたことと繋がったことも嬉しかったです。
それから、コーチする側もされる側も経験しましたが、コミュニケーション量が増えることで、人との心理的距離感がすごく縮まって心が解きほぐれていくのを感じました。日本人の特徴的な傾向じゃないでしょうか。「自分のことは自分でやりましょう」ではないですが、共感はするけど、心理的には距離があることってありますよね。
だからこそ、心が重いときに、一歩近寄ってくれる人がいると踏み出せる。そんな風に寄り添うことで、何か力になれるのではないかと感じたのがコーチングの世界に踏み出したきっかけです。
ありたい姿を顕在化するというのは、具体的にどんな変化なのでしょうか。
自分のゴールがはっきりして、なぜ自分が今立ち止まっているのかを理解して行動や思考に落とし込める、ということです。
職場がコーチングを取り入れていたとお話ししましたが、在宅ワークに社会が変わっていった中で、今までと違うライフスタイルがいきなりスタートしてしまいましたよね。そこになんとなくもやもやが生まれてくる。そのもやもやって何なんだろう?と問いかけると、ひとりひとりの答えが現れてきます。メリハリがない生活に流されてしまったり、誰に言われたわけでもないけれど「自分一人でやってる感」が出てきてしまったりといった風に。
まずはもやもやの正体をじっくり探り、それから、じゃあライフスタイルをどう変えたらいいのかとか、どこにたどり着くのがいいのか、ということを一緒に伴走しながら考えてもらいます。
もやもやと呼んでいたものを客観的視点も交えながら顕在化して、毎日1つずつ変えていこう!としたことで、メンバーの心が明るくなっていきました。
2:漠然とした不安の正体を、未来への指針へ。
現在は、どんなクライアントさんが多いですか?
仕事関係のご相談がメインのクライアントさんが多いです。
女性であれば、これから働き続けるにあたって何を目標にしたらいいのか、これでいいのか?といった迷いや、でも何をしたらいいのか?って立ち止まってしまって、話に来られる方が多い傾向にあります。
特に40歳前後の方は、がむしゃらに頑張った20代30代を乗り越えて、キャリアも積みあがって、会社にも居場所はあって、だけどこれからも同じようにやっていくのか?という悩みを抱えている方も少なくありません。
自分の体も心も若干傾いてくるタイミングで、誰かと話してみたかったとおっしゃっていました。セッションの中で、言葉になっていなかった不安やつらさのようなものが形を持ってきて涙されるシーンもありました。でも、それを超えるからこそ気持ちの切り替えがついて、前に進まれる方が多いんです。
周囲の環境部分もありますが、自分が自分を押し付けるプレッシャーも成熟してくる世代だからこそありますよね。ご家庭がある方も、独身の方も、それぞれの悩みがあると感じています。
男性の方ですと、これは一例ですが、30代半ばで仕事に慣れてきた頃に、でも配置転換はあって、自分がやりたいことも見えてくるけれどやれる環境や相手ではなくて…と状況に悩んで相談に来られる方もいます。
いろいろお話を聞いて、最終的には「では、あなたはどうしたいの?」という話に落ちてきます。家族も収入も会社の制約もなかったら何がしたい?って。
そこで初めて、自分自身のやりたいことと向き合って、歩き出す方向を一緒に探していきます。
経営層やマネジメント層に向けたコーチングの取り組みについてはいかがですか。
私自身はIT系にずっといるので、ITの導入やそれにまつわる組織づくりについてサポートさせていただく機会が多いですね。ITというと、世間的には斬新で新しいというイメージがあると思うのですが、実際は現状とあまり変えたくないという意見の方が多いんです。現場の社員にとってはこれまでやってきたことや土台のシステムが変わるのは抵抗があるものですから。現場からの抵抗を感じると、経営層も導入に足踏みしてしまうこともあります。人って悩んでいると、結局これまでと同じことをやり続ける傾向があるんです。
ですが、世の中の環境が変わっていく限り、これまでが良いと言っても変化せざるを得ないですし、変えていかないと社会が前進しません。
一気にドラスティックに変化させてしまうと現場から反抗心が出てきてしまいます。それを少しずつ、心理的抵抗感を抱かない形で変えていこう、目指すゴールはしっかり決めた上で、人の問題や資金の問題をひとつずつ整理していく、そんなコーチングをしています。
個人個人の心の中のもやっとと同じで、企業や組織、管理層の中にも「もやっと」があります。
経営層のイメージと現場のイメージがそれぞれどうなっているのか、どんな過去があってどんな未来を創りたいのか、本来やりたいことはなんなのか、と「もやっと」の正体を顕在化していく。「それをばらしてフラットな形にして、もう一回積み上げましょう。そのときは第3者の目になって一緒に見ていきますね」と。
どういうシーンでも、このアプローチやプロセスは変わらないと思っています。
ご自身がコーチングを受けていたことはありますか?
コーチングという形ではありませんが、40代なかばくらいまでは、各分野でご相談させていただく方がいました。私自身はズレを感じたとき、抱え込まずにもやもやを外に出すタイプだったので、フラットに第三者の目線で見てくれる人がいてくださると心強かったです。もちろん、そこで返ってきた反応やアドバイスを全て鵜呑みにはしていなかったですが、外からの意見を参考に、自分の中でどう取り込むかを考えるようにしていました。
3:これからの展望
今後、山野コーチが支えていきたい人たちとは。
私が考えているクライアントさんのイメージですが、ひとつは40代くらいの女性です。
大学も出て社会人にもなったけど、毎日同じことをやっていて心が苦しい状態を、お話を聞く中で寄り添い、そのこわばってしまった部分を砕いていければなと思っています。性別や年齢でくくることはありませんが、私自身の乗り越えてきたことや経験してきたことからお伝えできるお話も多いかと思っています。
それから、経営層と現場のギャップを埋めることは、今後もやっていきたいです。
上が決めたからやっているけど…みたいなトップダウンの仕組みは世の中にまだまだたくさんありますが、違うんだよなぁと思いながらやっていると、それが本来どんなに良い施策やシステムであっても、何事もうまくいきません。もっとニュートラルな形をめざしたいと思っています。各々のセクションの方が、100%ではなくてもそれぞれある程度納得して動けるよう、人の間に入りフローを調整したり、伝える言葉を変えたりですね。
現場の部署にいる人たちが新しいことをどう受け止めていくかって難しい問題のようですけど、でも本質的なところをちゃんと考えていけば、個人の目指していることと会社のやろうとしていることは紐づいてくるはずなんです。それを、ずれたまんま、もやもやしながら仕事をしなくてはならないから、ストレスになってしまう。
会社のビジョンと個人のビジョンをどうすりあわせていくのか。会社の動きはあなたの思いと近い所もあるんだよ、って、そういう話をちゃんとしていくことで、確実に組織としてのモチベーションのドライブが変わります。
そのお手伝いをしていきたいと思っています。
その他、山野コーチの今後の展望や目標を教えてください。
まだ先の話にはなると思いますが、子どもたちに対してコーチングをしたいと思っています。
大人と同じように、子どもたちももやもやしているのではと思っていて。自分の思っていることと、与えられている環境、周りから印象付けられること…それらのちょっとしたずれに悩んでも、それを発散する場所がないんじゃないかなって。
コーチングでそれを解決するということもそうですが、コーチングを通して「考え方」の引き出しが増えれば、子供たちは今も将来も少し生きていきやすくなるのではないかと思っています。
たとえば、相手の話を聞いて受け止める、傾聴する能力っていうのは学校では教えてくれません。教えてくれないけど、社会に出てからはめちゃくちゃ必要な能力ですよね。海外では、そういうことも授業に組み込まれているところもありますが、日本はまだそういった指導がカリキュラムに含まれていません。自分を持ちながら、相手の考え方を尊重するという、自立した精神状態を作る練習を学校っていう土俵の中でできて、早くに身に着ける機会を作れれば、子供同士の関わり方ももちろん、大人になってからの活動の仕方が変わってくるでしょう。
子どもの心理に対しての知見を十分身に着けてから、いつか取り組んでみたいと思っています。
インタビューの折々で、「クライアントさん自身の大切にしたい未来」に個々に寄り添ってくださる温かさがひしひしと伝わってきました。
コーチご自身のキャリアの中では、目先のことに必死だった20代30代を超えて、自分の本来の心の幸せを考えるホッとできる時間が40代半ばくらいに一段落できたと振り返られるシーンも。今は15年続けてきた茶道の他、仕事がひと段落したタイミングで始めたピアノで学生時代の音楽経験を再び紡ぎ始めるなど、新しく穏やかなチャレンジを続けておられます。理想とする生き方はそれぞれ違えども、これからキャリアを考えていく世代の方には頼もしいロールモデルとしても心を預けられるコーチのおひとりです。