教員からコーチへ、1人1人の生き方を支える。【道越コーチインタビュー】

道越久悟コーチは元は学校の先生。ご自身の教育現場での悩みを乗り越えた経験から、学校での人間関係や子育てに深く寄り添ったコーチングを得意とされます。教員時代初期の堅かった考え方がどうほぐれていったのか、そして今「Life is GAME!」の生き方を応援する思いの起源とは。実際のワーク例なども通して、道越コーチのセッションに迫ります。

1:コーチングとの出会い

コーチを始めたきっかけを教えてください

きっかけは大きく2つあります。
1つは自分自身が当時抱えていた仕事の悩みを乗り越えていく上で、心理学について学びたいと思ったことです。
教員時代、自分にはどうも真面目過ぎるというか、堅さがあったようで、生徒指導がうまくいかず学級崩壊を経験し、出勤時に拒否反応が出るなど自律神経失調症にもなった経験がありました。
それをなんとか乗り越えたいと思ったときに、カウンセリングやコーチング・心理学NLPを学ぶという選択肢が出てきて、それらの助けを得て考えや行動を改め、状況に冷静に対処できるようになったという経緯があります。心理学ってすごく有益なんだと身をもって実感しました。

もう1点は、自分自身の状況が改善に向かって行ったときに、同じように困っている人を助けられるのではと考えたことです。いろんなカウンセラーやコーチがいますが、頭で理屈はわかっていても実際経験をしているかどうかで全然違うなと思い、自分が苦しんで乗り超えた経験を活かせば、より広く多くの人の支えになれるのでは、と考えたわけです。相談者がどのぐらいしんどいのかっていうのをリアルにわかることは、今も自分のコーチングの強みになっていると思います。また、自分が経験してきたことを伝えることもできます。

初めは教員の仕事を続けながら学校の枠の中でそういったサポートをやっていたのですが、徐々に社会全体に対してもできるかなと思い起業に至りました。子どもの笑顔には周りにいる大人の笑顔が影響すると思ったので、学校・教育・子育ての現場での課題解決というのは変わらぬ軸でした。

実際、ご自身が状況を変えられたときの様子を伺えますか。

「イメージワーク」が有効だったように思っています。
強い(良い)イメージを弱い(悪い)イメージに変えるワーク式の取り組みです。

たとえば、目をつぶって苦手な人を思い浮かべる。そうすると相手の怖い表情が浮かんだり、心臓がぎゅっとなったり、体が硬直したりしますよね。そこで、頭の中のその人のイメージを虫ぐらい小さくしてみるんです。
そうして、「まあこのぐらい小さければ怖くはないな」と感じる。
そんな風に、苦手な物事のイメージを小さくしたり、滑稽にしたり、強力なパワーを持っている人を無力にしたりというのを脳内で行うイメージワークです。
イメージを変えていく中で、「なんだこれ」「こんなものか」と面白くなってきたら成功です。
その軽いイメージが自分に入ってくるから、実際にその物・ヒトと会ったときも、前より怖くなくなるんです。
逆に、感動したことや良いことをイメージの中で音量を上げたり、味わったり、ポジティブな方向に膨らませることもしました。どちらの場合も、自分の中で固まっているイメージをほぐしていくことが目的です。

元々私は物事をシリアス・まじめに捉えすぎるきらいがありました。一生懸命やって正義感で突っ走り、ストイックにやりすぎて空回りするような節があったんです。
それがこのワークを通していい意味で楽観的なゲーム感覚になれたというか、何かに取り組んでうまくいかなくても、失敗した!ではなく、実験している感覚になれました。今回はこの結果が出たからこうしてみようという風に。
コーチになった今でも、クライアントの目標にあわせて、こういったワークを入れていくことがあります。

イメージワークは自分の中で固まっているイメージをほぐします

2:ワークを取り入れた実例

今まで印象的だったクライアントはおられますか。

HSP(=Highly Sensitive Person)の方で、スモールトーク…いわゆる世間話ができないという悩みを抱えておられました。用事があるときは話せるけど、何気ない天気の話や初対面の相手などとの会話に強い負荷がかかるという状態です。
その方にも、実際に不得手だと感じる場面をやってみましょう、というようにワーク形式でコーチングを行いました。

たとえば、「暑いですね」と声をかけられたらどう返しますか?と問いかけてみると、やはり返事に困るから、今何を考えて黙ってしまったのかを次に聞きました。すると、「本当に暑いかな?」「そうでもないように思う」みたいに、真面目な受け答えが頭をめぐっていたそうです。
でも実際は「暑いですね」っていう話題はその場に油をさすような、仲良くなりたい、敵対しませんよという程度の意図ですよね。その意図を伝えて、事実とは違っても適当に返したら良いのだ、ということを感じてもらいます。これをいろいろなケースを想定していくつもやっていきます。

適当に返す、というのは、それが苦手な人にとっては難しいのでは?

その通りです。だからそこも一緒に練習します。自分じゃなくてもいいから、「誰かめっちゃ適当な人になったつもりでしゃべってみて」みたいに。
あるいは、会話って即興性が大事なので、こちらでイラストの描かれたカードを準備して、そのカードをパッと出したら、なんでもいいから描かれているものに関する会話を始める、といったようなワークもやりました。

ここで大事なのが、社交的な人物に変わろうということを意図しているわけではないという点です。
今困っている、必要な時にそういうやりとりができるようになれば良いだけで、自分自身の性格を変える必要はないよ、と伝えました。
その方のゴールは「知らない人とも話せる」ということですので、今の自分を変えるのではなく、そういった状況のときだけゲーム感覚でふるまいを変えられればOKですよ、と。性格を変えねば、と思うとそれが余計にプレッシャーになってしまうことも多いですからね。

3:生きる力を育て、支える。

ご自身のコーチングで意識しておられることは何ですか。

クライアントさん自身に力があるということを忘れないようにしたいと思っています。
セッションで話を聞いていると、こういう方向だなとか、これが答えだなと私の中で浮かぶことがあるのですが、それは自分の経験でしかないので、相談者が何を考えているかを深堀りするように気を付けています。
答えはクライアントさん自身の中にこそあるものですから、外から提示するのではなく、内側から答えを見つけることで解決できるようにしたいですね。

別で、今請け負う相談は教育現場や子どもに関連しているものがほとんどです。そうなると、スタート地点が自分自身の悩みでもあったので、内容によっては当時の古傷が痛むことがあるんです。あ、これってまだ癒されきっていないんだな…って。ですが、だからこそ話を通して自分も勉強になってますし、自分と向き合うことも同時にできていると思っています。

今後の展望について教えてください。

単発の相談ではなく、クライアントさんとある程度長く関わるのが理想です。
ゴルフでいうキャディーのようにその人の人生に関わっていたい。このホールをどう攻めていこうと考え決定するのは主体であるプロゴルファーが行うけれど、傍で見守りながら意見を求められたらサポートし、それがあっている/あっていないにかかわらず伴走するのがコーチだと思っています。1ホールだけだと見抜けないその方の癖や様々な傾向を、長くお付き合いすることで知ることができれば、より力になれると考えています。

単発の相談ではなく、クライアントさんとある程度長く関わるのが理想です。
ゴルフでいうキャディーのようにその人の人生に関わっていたい。このホールをどう攻めていこうと考え決定するのは主体であるプロゴルファーが行うけれど、傍で見守りながら意見を求められたらサポートし、それがあっている/あっていないにかかわらず伴走するのがコーチだと思っています。1ホールだけだと見抜けないその方の癖や様々な傾向を、長くお付き合いすることで知ることができれば、より力になれると考えています。コーチング以外では、現在小中学生用のプログラミング教室の立ち上げに取り組んでいるためそれを軌道に乗せることが目標です。ドローンを飛ばしたり、車を運転・操作したりできる講座を準備していますが、まだ日本ではどこもやっていない海外の教材なんです。

今の教育現場では、文科省にSTEM教育の推進は求められているもの、正直現場でやるのはなかなか難しいのが実情です。だから私たちが場所を作れれば、それも一つの貢献になれると思っています。
実は、プログラミングのIF条件設定みたいな部分をすっきりまとめていく能力って、コーチングでも似たようなことをやっているんじゃないかなって思っていて。頭の中を整理して、こうだったらこうと道のりを冷静に分析して飲み込むという点は思わぬところで共通しているんです。
他にも、構想している2教室目ではスポーツ分野でのVR活用やARスポーツなどの導入計画もしています。人生でやりたいと思ったことはやり残さないように挑戦したいですね。

学校教員から起業される方はあまり多くないように感じますが、学ぶことで自分の生き方を大きく変えられた道越コーチだからこそ、学ぶ場、そしてそこに生きる人々の思いを誰よりも尊重して応援できるのだと感じる、温かくも頼もしいお話をうかがいました。今回は教育現場の要素に焦点を当てましたが、広く生き方の選択肢や人間関係に関して、今を変えたいと思う方にぜひおすすめしたいコーチです。

道越久悟
コーチページ:https://coaching-search.jp/manage/co-kmitikoshi/