「そのままのあなたで大丈夫」不安な時代を生き抜くための自己探求コーチング【北上晴恵コーチ インタビュー】

コーチングと聞くと、目標達成や成功を追求するイメージを抱く方もいるかもしれません。しかし、今回お話を伺った北上晴恵コーチは、まずクライアントが抱える悩みやモヤモヤを「平らにする作業」から始めることを大切にしています。クライアントが「自分自身がどうなりたいのか」という本来の想いを見つけ、ありのままの自分を受け入れ、未来へ向かって自然に踏み出すためのサポートこそが北上コーチの心強さ。

本インタビューでは、北上コーチが考えるコーチングの真髄と、それが人生にもたらす変化について深く掘り下げていきます。

北村晴恵コーチのインタビュー

1:大切にしたいコーチングの想い

コーチングをする上で大切にしていることはどのようなことでしょうか。

お互いが安心して話ができる空間であることです。コーチである私とクライアントのあなたは対等で、あなたは過ごしやすいようにいてくださいね、という関係性や空気感が伝わることを大切にしています。
そのため、目標設定を中心としてやることを詰めていくだけ、というような進め方はしません。

コーチを受けるにあたって、目標が不明瞭でも良いということでしょうか。それとも、目標を達成したいという明確な思いがある方がコーチングに向いているのでしょうか。

「設定した目標に向かって何かをやる」という段階にたどり着いていない方でも、まったく問題ありません。目標設定とは、まず「自分自身がどうなりたいのか」を見つけることだと考えています。コーチングという二人でつくる時間の中で探していくこと、クライアントの方が「自分自身で見つけることができる」と信じることが私の役割です。
たとえば、「これに挑戦したい」「売上を達成したい」といった明確な目標がある方は、ご自身でもある程度進んでいけると思います。しかし、目標自体がわからず、何をしていいか迷っている方のほうが、きっと多いのではないでしょうか。そういった方々には、「自分が何を大切にしたいのか」「自分の大事な価値観は何なのか」といった、ご自身の感覚や好みの部分を一緒に探していきます。それが見つかる時って、クライアントの方の表情が明るくなり、オンラインの画面越しでも温度感が変わるのが伝わってくるのです。その瞬間を共有していただけることが、この仕事の素晴らしい点だと感じています。

もちろん一般的には、上を目指していくコーチングというのもあります。しかし、私はまず、クライアントの方が抱えている悩みを「平らにする作業」から始めることを大切にしています。医学的な病気ではないけれど一時的に落ち込んでいる状態になることってありますよね。カウンセリングやセラピーのように、まずはその気持ちを話して消化することから始めます。「なんでもいいからお話しください」とざっくばらんにうかがうこともあります。職場での嫌なこと、家庭のこと、友人関係、恋愛など、どんな悩みでも構いません。まずはそれらを話して気持ちを整理し、そこから目標に向かって進んでいけるようにサポートします。

そのような考えをなさる根源や、マインドについて教えてください。

人は「どういう指針で生きていけばいいのか」という部分が不明確な時に、助けを必要とします。たとえば高校生の進路相談などもそうですが、「何が得意なのか」「何が向いているのか」と尋ねてもうまく答えられる人ばかりではありません。自分の目の前にあるモデル、たとえばご両親や周りの人を見て、それしか知らず、限られた選択肢から道を選ぶことも多いですし、それは学生だからではなく、社会人であっても同じことは起こりえます。そんなときに話していたのが、「日々の生活の中から自分が大切だと感じることや好きなことに気づいていくことが大事だ」ということです。これは大人になっても同じで、たとえ社会人としてキャリアを積んでいても、自分の本当に好きなものに気づいていないために「これでいいのかな?」と疑問を感じることがあります。そういった時に、自分を見つけるための手段として、コーチングは非常に有効だと考えています。

北上晴恵コーチのコーチング風景のイメージ

2:コーチングとの出会いと気づき

コーチングとの出会いや、コーチングを通じて感じたことを教えてください。

コーチングとの出会いは、テレビで見て「面白そうだな」と思ったのがきっかけでした。学校では勉強は習いますが、人の話を聞いて、人から何かを引き出すというコミュニケーションのキャッチボールは教えてもらえませんでした。朗読の仕方は習っても、話し方や聞き方は習ってこなかった世代なので、人の話を聞くことの面白さや大切さ、そしてそこから自分自身も気づきを得られることに魅力を感じました。
社会に出てからも、企業研修などでコーチングやロジカルシンキングといった考え方や伝え方を学ぶ機会はありますが、全ての人がそうした研修を受けられるわけではありません。目先の業務スキルの向上などが優先され、こういったマインドセットや心の部分は二の次・三の次と後回しにされがちです。本来とても大切なことなのに、非常にもったいないと感じています。

会社員として働く中で、コーチングのスキルが役立つと感じることはありますか。

会社員として上司や同僚と話していると、相手の行動の裏にある「なぜそう考えたのか」「どういう気持ちでそれを選んだのか」といった部分まで踏み込まないことが多いと感じます。たとえばミスがあったときに、「なぜ間違ったの?」「なぜやったの?」という行動に対する質問だけでは、解決の核心にはたどり着けないと考えています。なぜ間違うような選択をしてしまったのかという、その人の気持ちの部分に触れるには、「どういう考え方からその行動が生まれたのか」を知る必要があります。しかし、先ほども話したように、真意に触れる問い方・聞き方を習っていない人が現在の企業や組織には多いでしょうから、そうなると問う側問われる側のどちらもやりづらくなってしまいます。

コーチングでは、目標設定に向かって「どう考えて、どう歩いていくか」という、未来について深く掘り下げていくため、話の幅が広がり、相手の真意を理解しやすくなります。起こった事実や成果、実績だけを見るのではなく、その奥にある「その人が何を大切にしているのか」を確かめてから進むことができる点が、仕事の場面でも非常に役立つと感じています。
そういったレベルでのマネジメントができる方が増えればなと思いますが、現状はまだ少ないと感じています。

相手や自分の大切にしているものを知ることは、どのような良い点があると考えますか。

仏教の「球体思考」の教えに例えると分かりやすいのですが、一つのものを様々な角度から見ると、それぞれ異なる側面が見えてきます。たとえば像をさまざまな角度から見ると、足や鼻、耳など異なる部分が見えるように、自分の良いところも悪いところも多角的に見つめることで、自分自身を受け入れやすくなると感じています。
コーチングでは「視点を変える質問」をすることで、時間、過去、イメージなど様々な要素を使って自分自身を深く探求し、より豊かな自分になっていけるようサポートしたいと考えています。私自身も、クライアントの方々と話す中で、自分とは違う発想に気づかされることが多く、学びを得ています。私がリードして変化を促すのではなく、コーチングでの気づきをご自身で考え続けることで、次にお会いしたときにはクライアントさんが自分自身で何かを見つけて、ぐっと表情が変わっているようなこともあります。その状況まで一緒に歩めれば、それが一番理想的だと私は思っています。異なる視点から会話をすることで、自分の中にすでにあった「何か」と繋がったり、鮮明に見えてきたりする。そこが変化のきっかけになるのだと思います。

会話・対話を通して変化が生まれるということについて、詳しくお聞かせください。

一人で「これが大好き」と思っているよりも、コーチや話を聞いてくれる人がいることで、その思いがより明確になり、広がっていくのを感じます。たとえば、山登りが好きで、コーチに「山に行って空気が綺麗で、みんなといて楽しかった」と話した時に、「そういう空間で過ごすと気持ちがリフレッシュして、次への活力が湧いてくるんですね」と言われると、自分の感じていたものが他者からの言葉を介してより深くイメージされ、自分だけでは気づかなかった新たな広がりが見えてきます。

先日、コーヒーを淹れる話をしていて、「誰かに持っていくつもりだったのに、途中で面白いものを見つけて忘れてしまった。これって良くないですよね」と言ったときに、「別に良くないことじゃない。好きなものがあったら、それでいいんじゃない」という考え方を提示されました。忘れた自分を責めるのではなく、楽しいことがあってよかったという気持ちが増える方が、より幸せで豊かに感じがしますよね。人は誰でも自分のやったことや発したことを反省しがちですが、自分を責めずに、次へと行動できるような気持ちを持つほうが、大袈裟からもしれませんが、生きていくのが楽だと思います。
失敗したらだめだとか、泣いたらだめだとか、自分に対しても思いがちですし、コミュニケーションについてまだ意識されていない古い教育や家庭環境の中では責められるシーンもあるかと思います。しかし、行動としてだめだったとしても、その気持ちを消化して前向きにもっていけなければ、元気になりづらいですよね。当然、人は元気な方が良いです。だから、コーチングを通してその手助けをしていきたいと考えています。

北上晴恵コーチのコーチング風景のイメージ

3:ありのままの自分を信じて

クライアントの方に共通する傾向や、印象的なクライアントはいらっしゃいましたか。

クライアントの方に共通する傾向としては、目標設定に迷っている方が多いと感じます。また、コーチングセッションでは、相手の話から感じたことや浮かんだイメージを伝えることを意識しています。受けた印象や、見えた景色を、自分の言葉を介して相手に伝え返すような形で、見えている映像を伝えてみます。これはフィードバックでありながら、その人の中でまだふわっとしている思いや感覚を、イメージ的な要素を盛り込むことで鮮明にしていくことを心がけています。ただし、イメージで受け取れる方と理論的な説明を好む方がいるので、相手のタイプを見極めるようにしています。目の前の相手に対して関心をきちんと持っていれば、どういったコミュニケーションが好きな方で、どういった言葉の届け方が良いかは、考えていけるはずです。

印象的なクライアントとしては、私がコーチングを始めたばかりの頃にセッションをさせていただいた70代くらいの男性の方がいます。経験が浅い私でしたが、20分という短い時間の中で、お互いに真剣に話ができたという印象が強く残っています。まだ何もできない頃でしたが、「この場で話すんだ」というお互いの合意があり、裏表なく話すということの大切さを感じさせていただきました。
段取りや空気感に慣れたコーチ同士の練習セッションでは得られない、リアルに人と向き合うとはどういうことなのかという感覚に触れた大切な出会いになりました。

もうお一方印象的だったのは、「人のためになりたい」という思いが先行し、ご自身の「何をしたいのか」が見つけられていなかった方です。人のために動きたい、人を動かしたいという気持ちは素晴らしいですが、コーチングはご自身がどうしたいのか、何をするのかを見つける場です。セッションの初めは何度思いをうかがっても、人をどう動かすか、どう人のためになるかという言葉が続いてしまいました。しかし、1時間かけて問いを重ねる中で、最後にやっと「自分自身が何をしたいのか」という話をしてくださいました。そこを一緒に見つけられたことには、とても感動しました。
セッションを受けに来る方の中には、「人を動かしたい、人をこう変えたい、こうさせたい」という思いを持って申し込んでこられる方もいるのですが、自分自身が主体であるというところに辿りつけたのは良かったです。

現在、セッションはどのような時間帯に行われていますか。

平日の夜、20~21時頃か、土日に実施しています。普段は会社員をしながら、平日夜と土日の時間でコーチングのクライアントとのセッションを行っています。しかし、今後も会社員としての仕事だけでなく、コーチングを通して人の話を聞くことを続けていきたいと考えています。クライアントの方からいただく、気づきを得た時の笑顔や表情の変化は、何物にも代えがたいものです。会社員として働く中でも相談をしたりされたりということはありますが、本格的に時間を決めて、進む先をみつけて一緒に進んでいく時間というのは、コーチングという場以外では得難いものだと思っています。
今後も現職と並行して、コーチングの時間を増やしていきたいと考えています。

どのような方にコーチングを受けてほしいですか。

自分自身の経験を活かしてお力になれるという意味では、40代から50代の、人生の分岐点にいるような方々にはよりフィットするのではと考えています。特に、仕事の中で悩んでいる方や、心身ともに疲れている方、このまま今の仕事を続けて良いのか迷っている方々に寄り添いたいと思っています。
また、最近、学生さんと話す機会がありましたが、彼らの可能性も感じており、彼らがこれからどのように成長していくのかにも興味があります。私たちの世代は、先輩の背中を見て、自分で探しながらやってきた部分があるため、コンプライアンス意識やコミュニケーションのリスクやリソースについて繊細な考えを持つ若い世代とのギャップに悩むことが正直あります。社会や組織の風土が時代と共に変わっていく中で、後輩との関わり方やこれからの自分をどう描いていくかといった悩みを抱えている方々とも、ぜひ話をしていきたいです。

もちろん、自分が経験していないライフステージや、環境の違う方が相手であっても、ここまでお話ししたような異なる視点・フラットな視点だからこそできる対話の魅力もあると感じています。たとえば、私自身は子育てをしていませんが、子どもとの関わり方やお子様の性質などを、パーソナリティータイプを分析した人格適応論などを用いて客観的・理論的に分析してお伝えすることもできます。引っ込み思案のお子さんにはこういう関わり方が良いですよ、など、理論的だからこそより実践しやすいアドバイスも可能です。子育てのリアルに寄り添うという形とは異なるかもしれません。しかし、むしろ自分の育児経験から「子育てってこういうものだから」と話すよりも、フラットな視点でお話しできることが強みにもなると思っていますので、ぜひご相談ください。

最後に、これからコーチングを受ける方にメッセージをお願いします。

冒頭の話に戻りますが、セッションの間は、ありのままの自分でいていただけたら嬉しいです。焦って「変わらなきゃ」と思うのではなく、そのままで良いのだと感じてほしいです。自分自身でいること、自分のやりたいことをやるという自然な姿でいることが、実は変化に繋がると考えています。自分を認めて受け入れられた瞬間にこそ、自然に前に向かっていけると感じています。

そして、もし何か気になったら、ぜひやってみてください。私も「コーチングってなんだろう?」とテレビを見て、大層な理由もなく始めたことがきっかけで、こうして新しい出会いや新しい学びに触れることができました。自分のアンテナに引っかかったことには、どんどん挑戦してみることが大切だと思います。やってみて、うまくいかなかったり違うなと思ったりしたときはやめればいいのですから。興味を持って、やりたいと思ったことや気になるものがあれば、どんどん進んでいく。私はその考えを大切にしていますし、そうやって踏み出した方の応援ができればと思っています。

北上コーチはキャリアコンサルタント、コーチング、カウンセリングなど、様々な資格をお持ちです。心が辛い時、活力がみなぎり目標に向かいたい時、あるいは職業について行動を起こしたい時など、どのような心の状態であっても対応できる力量がある上に、ひとりひとりの状況に心を寄せてくださる温かさも併せ持つ優しいセッションになることは間違いありません。信頼できる誰かと歩み始めたいと感じた方は、ぜひセッションでありのままのあなたの声を聞かせてください。

この記事のコーチ

北上 晴恵コーチ

安心して話せる場所で、一緒に時間を過ごしませんか?
話したい事がある方はもちろん、何を話したらよいか分からない方も、自分の中で言語されていない言葉を見つけ、自分自身で実感し、感動や、気持ちを認めて、自分自身が大切だと信じる力を体感し行動につなげて行くことが出来ます。
人は誰もが対等で大切な一人です。