組織の変化を作る組織開発コーチング【月森 裕樹子コーチ】

「研修のアンケートは高評価なのに、現場の行動が変わらない」
「人事制度を整えたけれど、日々のマネジメントにつながっていない」
「社員にもっと主体的に動いてほしい。でも、結局は社長や人事が判断し、動かしている」

こうした悩みを抱えている社長や人事責任者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
研修や制度には、それぞれ大切な役割があります。
ただ、施策を導入することと、組織が変わることは同じではありません。

必要なのは、個々の施策だけでなく、それが使われる日常の仕事や、人と人との関係にも目を向けること。
そして、組織の中にいる人たち自身が考え、選び、実践する過程を支えることです。

私は、その伴走支援を「組織開発コーチング」と呼んでいます。

「正しい答え」を得るだけでは、組織は変わらない

経営者一人の判断で進められた会社も、一緒に働く人が増えると、伝え方や任せ方、意思決定の仕方を見直す必要が出てきます。

経営者には明確な方針でも、社員は自分の仕事と結びつけられていない。
人事が整えた制度と、現場で期待される行動がかみ合っていない。会議では意見が出ず、最後は社長が決めている。

こうした状態を、社員の能力や意欲だけで説明することはできません。

今は、AIに相談すれば、会議の進め方や育成方法、評価制度の選択肢などを短時間で得られます。
情報を集め、考える材料を増やすうえで、AIは役立ちます。

しかし、「この会社では何を大切にするのか」「現場は何に困っているのか」「何を優先し、どう動くのか」は、外から答えを渡すだけでは決まりません。

経営者、人事、管理職、現場のメンバーが対話し、違いを確かめながら、自分たちの判断と行動につなげる必要があります。

知識や選択肢を得やすい時代だからこそ、それを自分たちの組織で活かすための問いと対話が大切になる。

私はそう考えています。

研修だけが、人材開発ではない

先日、ベテランの研修講師、事業会社の人材開発担当者、人材開発コンサルタントと食事をしながら、
「研修を花火で終わらせないためには」という話をしました。
そこであらためて考えたのは、研修での気づきを、その後どう育てていくかということです。

研修当日は盛り上がり、「明日からやってみよう」と思う。
けれど、職場に戻ると忙しさに追われ、いつもの関わり方に戻ってしまう。
気づきは、そのまま日常の行動として定着するわけではありません。

たとえば、管理職が「部下の話を最後まで聴こう」と決めても、実際の面談では、つい助言したり、結論を急いだりします。

そこで、実践をフォローアップのコーチングで振り返る。
何が難しかったのか、次はどう関わりたいのかを考え、また試す。

研修で気づく。現場で試す。コーチングで振り返る。そして、また試す。

研修だけでなく、仕事の経験、挑戦する機会、日常の対話や振り返りも、人の成長を支えます。
そのつながりまで、人材開発として考えたいのです。

人材開発にコーチングを活用する意義

研修は、知識やスキルを得る大切な機会です。
ただ、学んだことを自分の仕事や職場で活かすには、「自分の場合はどうするのか」を考え、決める過程が欠かせません。

コーチングは、答えを教えるのではなく、対話を通して、本人やチームが自分で考え、選び、実践し、振り返ることを支える関わりです。

人材開発でのコーチングには、大きく二つの形があると考えています。

パーソナルコーチング:一人ひとりの学びを、行動につなげる

経営者や管理職、リーダー個人と一対一で行うコーチングです。
研修や経験での気づきを、自分の仕事の場面に置き換え、次の一歩を決められる。
役割や課題、強みは人によって違う。その人の状況に合わせた実践を考えられる。

組織開発コーチング:関係性や仕組みも含めて、変化を支える

チームや部門、経営と現場など、複数の人が関わる場に働きかけるコーチングです。
課題や優先順位を共有し、決定と行動につなげる対話の場をつくれる研修や制度が現場で使われるよう、関係性や仕事の進め方も含めて見直せる。

個人の成長だけ、あるいは研修だけでは、組織の変化につながりにくいことがあります。
パーソナルコーチングと組織開発コーチングを必要に応じて組み合わせることで、人の成長と組織の変化をつなげやすくなります。では、その「つなげる」とは具体的にどういうことか。
次は、関係と仕組みの側から見てみましょう。

一方だけではなく、関係と仕組みを見る

上司と若手の関わりを変えたいなら、上司だけに学びを求めて終わりにしないことも大切です。

「自分で考え、必要なときに相談できる関係」を目指すなら、上司は考えを引き出す聴き方や、安心して相談できる関わり方を学ぶ。若手は、自分の考えや困りごと、必要な支援を言葉にすることを学ぶ。

同じ研修を全員に行うのではなく、同じ課題をそれぞれの立場から扱い、学びを表裏一体にする。
もちろん、若手に一方的な適応を求めるのではなく、上司には安心して発言できる環境をつくる役割があります。

さらに、研修で「挑戦しよう」と伝えても、現場で失敗を責められるなら、実践は難しくなります。
「対話しよう」と学んでも、その時間を取れない業務量なら、仕事の進め方も見直す必要があります。

人の成長と、それを支える関係性・仕組みを切り離さない。
ここに、組織開発の視点があります。

今、時間とお金をかけるべきなのはどこか

社長や人事責任者が判断したいのは、「どの研修を入れるか」だけではありません。

この組織が成長するために、今、本当に必要なことは何か。

知識やスキルを学ぶことなのか。学んだことを試す機会なのか。
役割や権限の整理なのか。経営と現場が率直に話せる場なのか。

必要な働きかけによって、限られた時間とお金の配分も変わります。

私自身、人事の支援を提供する側と、事業会社の中で人事を担う側、その両方の世界を見てきました。

研修会社は研修を、制度立案を支援する会社は制度を。
それぞれの専門性は大切ですが、提供できるものを入口にすると、見える課題が限られることもあります。

一方、企業の人事は、経営の方向性、現場の状態、育成、制度、日常の仕事をつなげて考える必要があります。

だから私は、「自分が何を提供できるか」ではなく、「クライアント企業の成長に本当に必要なことは何か」から考えたいのです。それは、コーチングを導入するかどうかについても同じです。

組織開発コーチングで、何を支えるのか

組織開発コーチは、社長や人事責任者の相談相手であり、組織づくりの伴走者です。

まず、目指す組織の姿と、今起きていることを一緒に整理します。
必要に応じて社員へのヒアリングやサーベイも用い、経営と現場が見ている景色の違いを捉えます。

そのうえで、課題に合わせて、次のような働きかけを組み合わせます。

・経営の想いやMVVを、社員の仕事と結びつける対話
・幹部やチームが、課題と優先順位を共有する場の設計
・意見を出し合い、決定と行動につなげる会議のファシリテーション
・管理職のコーチングや、研修後の実践・振り返りの支援
・上司と若手の学びをつなぐ働きかけ
・役割・権限や仕事の進め方についての対話と整理

すべてを一度に行うわけではありません。
必要な専門家とも連携し、優先する課題から小さく取り組みます。

そして、実際に何が変わったのか、何がまだ難しいのかを確かめ、次の実践へつなげる。
施策を実施して終わりにせず、日常で使われるところまで支えます。

主役は、コーチではなく、その組織

「組織開発コーチング」という名称には、もう一つ大切な思いがあります。

私たちはあくまでも伴走者であり、変化の主体は組織にある。

専門的な情報提供や提案が必要な場面はあります。
ただ、支援者が方向性を示し続けることで、組織が答えを受け取る側にとどまってしまうことは避けたいのです。

これは、コンサルタントとコーチの優劣の話ではありません。
私自身が、どのような姿勢で関わるかということです。

情報や選択肢をお伝えする場合も、それは従うべき答えではなく、自分たちで考え、選ぶための材料です。
何を目指し、何に取り組み、どう実践するかを決める主導権は、組織の側にあります。

伴走は、任せきりにすることでもありません。
対話する場を支え、考えが止まっているところに問いを置き、実践と振り返りを一緒に進める。

目指すのは、支援者がいなければ動けない組織ではなく、自分たちで考え、対話し、行動し、変化を続けられる組織です。

次の施策を決める前に、一度立ち止まる

研修を花火で終わらせないためには、研修だけを見ない。制度を活かすためには、制度だけを見ない。

個人の成長と、関係性や仕組みの変化。
その両方をつなげて考えることが、企業の成長を支える土台になると私は考えています。

「次はどんな施策を入れるか」を決める前に、「今、私たちの組織では何が起きているのか」「何を変えたいのか」を一緒に整理してみませんか。

まだ課題をうまく言葉にできなくても構いません。
社長や人事責任者の方が抱えている違和感から、考え始めることができます。

クライアント企業の成長にとって、本当に必要なことを一緒に考える。
そして、その組織自身が選び、動く力を育てる。

私は、そんな組織開発コーチとして伴走していきたいと思っています。


この記事のコーチは

月森 裕樹子コーチ

人事コンサルの俯瞰力と社長直下の現場感覚。本音を戦略に昇華し、自分らしく組織を動かすリーダーとしてのあり方を伴走支援。